高校野球とプロ野球の違い

プロ野球は興味がないが高校野球は毎年欠かさずチェックする、という高校野球ファンが自分の周りにはたくさんいる。技量だけなら当然プロの方が上手いわけだし、華麗なプレーを見たくて高校野球を見ている、という人はそうそういないだろう。『泥臭さ』『はつらつ』といった言葉で表されるような、若いエネルギーが最大に放出される瞬間を捉えたいからだと思う。

今年開催された第89回春の選抜高校野球大会も、エネルギーとエネルギーがぶつかり合う白熱の試合が続いたが、本大会を総括すると“打高投低”“西高東低”という印象を抱いた。“打高投低”に関しては、打者の猛打がより際立つ場面が多く、それに反比例して投手の存在感があまり出てこない試合が散見された。打撃成績を見てみると、大会通算の333得点、608安打、112二塁打はどれも大会新記録であり、例年以上に乱打戦が繰り広げられたことがよく分かる。一方、打撃で本調子が出ずに大会を終えた選手がいたのも事実だ。

小学六年生の頃から注目を浴び続けている大会屈指のスラッガー・清宮幸太郎は持ち前の打撃が大会前から期待されていたが、本塁打を放つことなく、キャプテンとして率いた早稲田実業は2回戦で敗退した。彼にとって最後の夏。ぜひ再び甲子園でホームランをかっ飛ばす姿を見せて欲しい。

“西高東低”に関しては、本大会は西日本勢、特に近畿勢の活躍に目を見張るものがあった。実際ベスト4入りしたチームを並べてみると『大阪・大阪桐蔭&履正社』『兵庫・報徳学園』『熊本・秀岳館』と、4チーム中3チームを近畿圏の高校が占めているという状況だ。さらに決勝は『大阪桐蔭VS履正社』という大阪勢同士のカードになり、大阪における高校野球レベルが突き抜けていることは見ている誰もが感じたことだろう。私は実際、大阪ブロックの甲子園予選の試合を見に行ったことがあるが、大阪でベスト8に入るチームは、どこが代表になっても甲子園で実績を残せると思えるレベルの高さがあり、そのレベルの高さに驚かされた。

2015年夏の予選で履正社と大阪桐蔭が対戦して履正社が2回戦で姿を消したように、強豪が早い段階で夏を終えてしまうのも事実で、これだけ厳しい競争に勝ち残ったからこそ、甲子園でも勝ち残っていけるのだな、とつくづく思う。こうした春の状況を踏まえると、夏は1点を争う投手戦や、東日本勢の活躍を楽しみにしたいところだ。